1.限定承認とは
限定承認とは、相続した資産の範囲内でのみ、債務も相続するという相続の制度です。 法定相続人は相続をする際に、相続をするかどうかについて単純承認・限定承認・相続放棄という3つの選択肢の中から選ぶことになります。
特に、借金・負債が多く、相続をしたくない場合には、限定承認・相続放棄の2つのうちどちらかを利用します。
では2つの方法のうち、限定承認にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
2.限定承認のメリット
限定承認には、次のようなメリットがあります。
2-1.負債の額がわからないときにリスクをとらずに相続ができる
負債は請求されるまでわからないことがあります。
銀行や消費者金融への借金のように、信用情報機関で調査をすれば判明しますが、信用情報を介さない負債については調べづらいことが通常です。
このような場合に、相続をしたい資産があるような場合には、リスクをとらずに相続をすることができます。
2-2.余剰があれば相続をすることができる
相続放棄は、最初から相続人ではなかったものとみなすとしているので、借金・負債を相続しませんが、清算をして余剰があった場合でも、すべての財産に対して相続人ではなくなるので、相続をすることができません。
他方で、限定承認では、資産になる遺産と負債を清算して、余剰がでた場合に、相続人は受け取りをすることができます。
2-3.不動産を優先的に買い取ることができる
限定承認では、不動産を競売に付すのが原則となります(民法932条本文)。
もっとも、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価額を弁済することで競売を止めることができます(同条ただし書き)。
自宅をどうしても手放したくない等のような場合には、限定承認は有効な手段であるといえます。
3.限定承認のデメリット
一方で限定承認をすることのデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
3-1.相続人全員でないと行うことができない
まず限定承認は、相続人全員で行う必要があります(民法第923条)。
そのため、相続人が複数いて一人でも承諾を得られなければ利用することができません。
3-2.手続が複雑
限定承認は債権者調査のための公告や、清算などの手続きがあり、時間も手間もかかります。
3-3.準確定申告を行わなければならない
被相続人が個人事業主などで、確定申告をする必要がある人等の場合には、相続人は準確定申告をする必要があります。
限定承認は、相続自体はするため、相続人として、準確定申告をする必要があります。
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