- 死後事務委任契約の概要
- 死後事務委任契約と終活でよく聞く制度との違い
- 死後事務委任契約の手続き
【Cross Talk 】死後事務委任契約とはどのようなものですか?
現在私は終活をしています。自分が亡くなった後に家族に負担をかけたくない、と考えでいろんな制度を見比べているのですが、その中で「死後事務委任契約」というものがあり気になっています。
終活の制度の中ではあまりメジャーなものではないですが、家族に負担をかけたくないという点では心強いものです。詳しく制度の中身をお伝えしますね。
はい、よろしくお願いします。
人が亡くなると、相続だけではなく、死亡届などの役所などへの書類の提出や、未払いの費用の精算など様々な手続きが発生します。数も多く、書類を提出しなければならず、非常に面倒であることが知られています。 これらは遺言書で対応することが難しいことから、死後に遺族に負担をかけたくないという方に死後事務委任契約は選ばれています。このページでは死後事務委任契約についてお伝えいたします。
死後事務委任契約とは
- 死後事務委任契約の概要
- 死後事務委任契約と終活に使われる他の制度との比較
死後事務委任契約ってどのような制度ですか?
死後事務委任契約がどのようなものか、他の終活でよく使われる制度との違いなどと一緒に確認しましょう。
死後事務委任契約とはどのようなものでしょうか。
死後事務委任契約の内容
死後事務委任契約とは、自分の死後に発生する事務について委任をする契約のことをいいます。 人が亡くなると、相続のほか、様々な手続きが発生します。 相続手続き以外の主なものとしては、- 葬儀に関する手続き
- 役所などへの届け出
- 遺品整理
- 各種契約についての解約
一つ一つ書類を作成して、添付書類を集めて送付するということが必要であるにも関わらず、中には期限があるようなものもあり、手続きは相続人・親族に負担をかけることになります。 死後事務委任契約は、これらの手続きを自分が信頼をする人に委託する契約です。 この契約を結んでおくと、事務を委託した人が相続人・親族に代わって手続きを行ってくれますので、負担をかけないで済みます。
死後事務委任契約と遺言書との違い
では、ここからは終活で出てくる制度との違いを比較してみましょう。 遺言書は、自分の死後の法律関係についての意思表示をしておくものです。 遺言書を作成せずに亡くなった場合には、民法の規定に従って相続がされます。遺言書を作成しておくことで、民法の相続に関する規定とは異なる遺産の承継をすることが可能となります。 死後のことを規定しておくという点で死後事務委任契約と遺言書は似ていますが、遺言書は自分の遺産関係や親族関係など、法的効力が発生する事項についてのみ作成するのに対して、死後事務委任契約は死後の事務的な手続きを委託することを目的とします。 ですので、遺産の割り振りについては遺言書を作成しておき、同時に死後事務委任契約を結んでおくことで、遺族に負担をかけずに済むことができます。
遺言書については「遺言書とは?普通方式・特別方式すべてを簡単に解説」で詳しく解説しているので、併せて参照してください。
死後事務委任契約と成年後見との違い
成年後見とは、生活をしていく上での判断能力が不十分になったときに、後見人といういわゆる保護者のような立場の人間をつけて、本人を保護する制度のことをいいます。 成年後見は本人が生存しているうちに、本人の療養看護・財産管理をするための制度なので、亡くなった後の事務手続きである死後事務委任契約とは異なります。 また、判断能力があれば、生きている間のことは任意後見人に任せて、亡くなった後のことは死後事務委任契約を結んでおく、ということが家族の負担を減らす上で効果的です。成年後見については「相続人に認知症の方がいる場合どうするの?成年後見人制度とは?」で詳しく解説しているので併せて参照してください。
死後事務委任契約と家族信託との違い
家族信託とは、受託者に資産を管理してもらって、受益者が発生する利益を受け取るという信託契約を結ぶものです。 本人が認知症になったときに資産を管理してもらう方法に使ったり、相続人である子どもが利益を受け取るようにして相続対策に使ったりします。 どのように家族信託を使う場合でも、遺産を管理してもらって利益を受けるということが家族信託なので、死後事務委任とは異なる制度です。財産管理の方法を家族信託で行うと同時に、死後事務委任契約を結んで事務処理を行ってもらうことは可能なので、併せて利用すると家族の負担が少なくなって良いでしょう。
死後事務委任契約の手続き
- 死後事務委任契約は生前まだ意思がしっかりしている間に契約をする
- 死後事務委任契約は公正証書を作成する
死後事務委任契約はどのような手続きで行うのですか?
契約ですので、本人がきちんと契約ができるうちに行っておきます。契約を結ぶ際には公正証書を作成しましょう。
死後事務委任契約の手続きについて確認しましょう。
依頼をする相手を見つける
死後事務委任契約は、本人と依頼をする人の間で委任契約を結ぶものです。 契約を結ぶためには、きちんと契約の内容を判別できる意思能力が必要ですので(民法3条の2)、認知症・高齢が原因できちんとした意思表示ができなくなる前に契約を結んでおく必要があります。 その上で、死後事務委任契約の相手を見つけて、契約の交渉を行います。 親族や親しい人に依頼する場合もありますが、面倒な手続きも全部任せられる点で弁護士などの専門家に依頼するケースも非常に多いです。公正証書で作成する
死後事務委任契約については公正証書で作ることが推奨されています。 公正証書とは、ある事実を証明する文書で、公証人が作成するものをいいます。 死後事務委任契約については、死後に委託された人が遺族に示して手続きを行うことが想定されています。 遺族に死後事務委任契約の存在を伝えていなかったような場合には、本当にそのような契約があったのか、本人の意思に基づいて契約を結んだのか、などが明確になっていないとして、トラブルになるケースがあります。公正証書で作成した場合には、公証役場で本人の意思に基づいてなされたことを確認することができます。 そのため、トラブルとなることを避けやすくなります。 死後事務委任を結ぶ相手を見つけて委託内容が決まると、公証役場に申し込みをします。 1回目に契約書の案と印鑑証明を持って公証役場を訪問して受付をしてもらい、2週間後くらいに期日が指定されますのでその日に再度公証役場を訪問します。
まとめ
このページでは死後事務委任契約についてお伝えしてきました。 死後の面倒な手続きを委託する人を生前に決めておくことができる点で、遺族に面倒をかけたくない方に利用されるのが死後事務委任契約です。 トラブルにならないためにも公正証書によって作成するのが望ましいので、一度弁護士に相談することをお勧めします。
- 身近に頼れる人や家族がいないため、不安がある
- 家族や親族に負担をかけたくない
- 死後の手続きや葬儀などに具体的な要望がある
- 遺品整理の際に、身近な人には見られたくないものがある
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